膝の裏が痛い|ベーカー嚢腫|反張膝|腓腹筋疲労
ひざの裏の痛みと3つの原因
ひざは私達の体の中で最も負担がかかりやすい関節です。
できるだけその衝撃を和らげ摩擦を軽減するために、ひざ関節の周囲には複数(十数個)の「滑液包」という袋があり、内部には少量の液体(滑液)を含んでいます。
(画像はイメージです)
■ベーカー嚢腫
ひざの裏が痛くなる症状に、「ベーカー嚢腫(のうしゅ)」(※1)というのがあります。
(※1)名前の由来は、ベーカーという人が結核菌による膝関節炎に合併する嚢腫(※2)として初めて紹介したことによります。
(症例としては、変形性膝関節症、慢性関節リウマチといった膝の関節炎に合併して起こることがほとんどです)
(※2)良性腫瘍(しゅよう)の一種。袋状で、中に多量の液体がたまったもの。
膝の後ろにある「滑液包」で炎症が起こり、その袋により以上の水が溜まると、こぶのように腫れてきます。
変形性膝関節症が進んでくると、炎症によって関節内に関節液が溜まりますが、これがひざの裏に押し出されて、あたかも腫瘤のように液が溜まる状態です。
[症状]
痛みは少なく、腫れやひざの曲げ伸ばしをするときの圧迫感、違和感といった症状が主です。
ひざの使いすぎや他の理由により、袋の中の滑液が多くなってくると、圧迫感が増し強く痛んだり、時に嚢胞が破裂することがあります。
こうなると嚢腫内の関節液が漏れ出し周囲の組織に炎症を生じさせ、急速に局所的な痛みや腫れを起こすことになります。
また、膝の後ろを通っている血管がベーカー嚢胞に圧迫され「血栓性静脈炎」(血のかたまりができて静脈をふさいでしまう)を引き起こすこともあります。
[原因]
ベーカー嚢腫は50代以降の女性に発症例が多くみられます。
これは、女性に多い「浮き指」や外反母趾の影響があると考えられています。
浮き指や外反母趾の状態だと、膝が反りすぎていたり、直線のようにまっすぐになってしまうために、ひざより上の骨と下の骨の負担がすべて、膝の裏側に掛かってきてしまいます。
そして、このひざの裏側にかかる負担に耐えようとする防衛反応によって、脂肪が溜まってきます。
それから、女性特有の身体的特徴にもその原因が考えられます。
一般的に、男性に比して女性の方が筋力も弱く、関節も浅く造られています。
筋力が弱いため女性は重力の負担に対し、足指の「踏んばり力」が負けてしまい、外反母趾や浮き指(指上げ足)になってしまうというわけです。
その結果、要は身体はバランスをとろうとして、足裏の歪みに比例して体にも歪みが生じる、ということなのです。
[ベーカー嚢胞の治療]
ベーカー嚢胞の治療は、症状が出ていなければ治療の必要はありませが、慢性的に膝の腫れがある場合は、注射器で滑液を抜く治療が行われます。
またベーカー嚢胞の形成を予防するためにステロイド薬を患部に注入することもあります。
もし嚢胞が破裂してしまった場合には、非ステロイド性抗炎症薬で痛みと炎症を抑えていきます。
手術が行われることは多くありませんが、保存的治療が効果なく、痛みが強い場合などには外科的手術で嚢腫を切除することもあります。
■反張膝
次に、膝の裏側が全体に痛みを感じる場合は、何よりも「反張膝」(ハンチョウヒザ)の可能性を考える必要があります。
膝痛の典型的な症例の一つでもあります。
正常な膝の場合、足を真っ直ぐに伸ばした時地面に垂直に膝は伸びます。
「反張膝」は膝を伸ばしたときに、体の後方に膝が弓のように反り返っている状態の事です。イメージとしては膝が逆に折れているといった感じです。
日常生活の姿勢が原因となるパターンと、赤ちゃんにもっとも多い先天性の反張膝がありあります。
(乳幼児の場合は、関節がまだ固定されていない為、簡単な固定で症状は完治します)
反張膝が膝裏の痛みの原因と考えられる場合は、すぐに治療を開始する必要があります。時間の経過とともに症状が悪化しやすい障害である為です。
反張膝の治療は、まず膝を守る筋力を強くすることが第一です。
治療の取り組みによって完治が可能な障害ですので、根気よく治療を継続する事が反張膝の障害を克服する最大のポイントです。
■腓腹筋(ふくらはぎ)の機能低下
そのほかに、ひざの裏が痛い場合として、すねの後ろにある腓腹筋(ひふくきん=ふくらはぎ)の外側の筋肉である「腓腹筋外側頭」の疲労による伸展機構(ひざの曲げ伸ばし)の機能低下が考えられます。
この伸展機能が低下するとまずひざの前側が痛くなります。そしてこの膝の前側の痛みをカバーするために後ろにある「腓腹筋」に負担がかかり、 ひざの裏側が痛い症状があらわれます。
※ふくらはぎは左右2つの筋肉で構成されています。内側(股関節側)の筋肉を内側腓腹筋といいます。
※「腓腹筋」は主に足首の関節の動きに関係していますが、ひざの曲げ伸ばしにも関係しています。
この場合は、「腓腹筋」の疲労によって痛くなっているので、ストレッチを行い痛みを軽減させると良いでしょう。