腰部筋筋膜症(筋筋膜性腰痛症)の症状と改善法
羽生結弦選手と筋筋膜性腰痛症
ソチ五輪フィギュアスケート男子金メダルの羽生結弦(19)選手は2014年9月、練習中に腰を痛め、同年10月のフィンランディア杯(フィンランド・エスポー)を欠場しています。
診断は「筋筋膜性腰痛症」ということでした。
筋筋膜性腰痛は、動作や運動によって、筋肉や筋膜(筋肉を包む膜)が疲労して起こることが多いとされます。一言で言えば"腰周辺の筋肉疲労による痛み"です。
- 1日に何時間も座りっぱなしで仕事をすることが多い。(デスクワーク)
- 長距離の車の運転など。(トラックやタクシーの運転手)
- 一日の中で立ちっぱなしの時間が長い。(販売員、看護・介護関係、警備員など)
- 中腰の姿勢、前かがみの姿勢でいることが多い。
- 腰を何度も前後にまげる、腰をひねる。(羽生選手は正にこの例でしょうか)
(ある面、職業病と言えなくもありません。)
というような毎日の繰り返しで、腰に疲れがたまります。
その疲れが限界点を超えたときに腰に痛みを起こすのです。
さらに、肥満や運動不足などで筋肉の質が落ちている場合は、その限界点が腰痛のない健康な人より低くなりますので、ちょっとしたことで腰に痛みを感じます。
筋筋膜性腰痛の症状と特徴
腰あるいは腰から背中にかけての痛みがある。
腰の張り、こり、だるさ、重さなどの違和感がある。
※腰の痛みのみで、脚のしびれのような、ほかの症状は伴いません。
※背骨や椎間板などの関節部、また神経に異常は見当たりません。(非特異的腰痛)
長くても数日安静にしていれば治るのが普通です。
それでも長引くようならば診察を受けましょう。
【筋筋膜性腰痛の本当の原因】
筋筋膜性腰痛をもたらす根本の原因は、大腰筋の拘縮(持続性収縮)です。
大腰筋は、腰の脊柱と太ももの大腿骨とをつないでいるインナーマッスルです。上半身と下半身をつないでいる唯一の筋肉です。
お尻の筋肉を引き上げて骨盤の位置を正常に保ち、腰が曲がって猫背にならないようにしています。また背骨や脊柱起立筋などの背中の筋肉を下から支える役割も持ちます。
言わば、私達の直立二足歩行を支える重要な役目を果たしています。
さらに、大腰筋には上体を曲げる働きがあり、大腰筋がずっと縮んだまま伸びにくくなると、背筋をまっすぐにすることがつらくなります。
長くしゃがんだままでいると、体を起こすのがしんどくなります。
このとき、腰(背中側)の筋肉は余分な力を使わなければなりません。
その結果、腰の筋肉に疲労が溜まり、筋筋膜性腰痛になってしまうのです。
大腰筋の拘縮が原因の筋筋膜性腰痛の症状
- 長時間立っていると腰が痛くなってくる。
- 絶えず腰がだるくて、重い感じがする。
- 背筋をまっすぐ伸ばしていることが辛く、逆に猫背気味にしているのが楽。
- 仰向けに寝ると背中が浮いていて、手とかを入れると落ち着く。
- 横向きで股関節を曲げて寝ているのが楽。
- 朝起きたときに痛いことが多い。
筋筋膜性腰痛の一般的な治療法
筋肉の緊張や炎症を抑えるための治療(保存的療法)が基本です。
薬物療法
炎症を抑えて痛みを和らげる"消炎鎮痛作用"のある「外用薬」(湿布等)を患部に使うことが多いです。
運動療法
ストレッチ運動などを行い、腰の筋肉を伸ばして筋肉の緊張を和らげます。椎間関節のズレによる腰の捻挫が原因となっている場合は、関節の矯正を行います。
温熱療法
ホットパックや超音波などで腰を温め、血行(血液の流れ)をよくします。筋肉の緊張がほぐれて痛みが和らぐほか、疲労物質が流れ出て回復が早まります。
装具療法
コルセットなどの補助器具で腰を支え、負担を減らします。
日常生活における対策・予防法
保存的療法(手術以外の治療法)や、指圧・マッサージなどの民間療法は、あくまで対症療法(今生じている痛みを解消するための治療法)です。
痛みの根本的な原因となっている「腰に負担をかける生活習慣」が変わらなければ、いずれまた筋肉に疲れがたまって腰痛が再発してしまう可能性が高いです。
筋筋膜性腰痛症の改善のために、自分の生活を振り返り、何が腰によくないのかをしっかりと把握することが肝要です。
現在、腰痛で悩んでいる方のほとんどは、投薬治療・牽引治療、手術といった対症療法によらず、生活習慣上の改善やトレーニングでよくすることが可能です。
それは、日常生活での悪い姿勢がもたらす身体の歪みが腰痛に発展することがほとんどだからです。つまり、その原因である日常生活の改善を行うことが腰痛改善の最短ルートになるということです。