変形性膝関節症の治療|外科的治療
自分の足で歩き遊べる"健康寿命"を、"平均寿命"に近づける
ひざ関節の軟骨の磨耗が進み、硬骨どうしがぶつかることで当然痛みが強くなり、ますます歩きづらくなります。
レントゲン写真で見て関節のすき間がほぼなくなった状態になると、もはや保存療法での治療効果が期待できなくなります。
ここまで進行してくると日常生活に大きな障害をもたらしてきますので、手術による治療が選択されます。
手術には、
(2)高位脛骨骨切り手術
(3)人工膝関節全置換手術(あるいは、片側人工膝関節置換手術)
(1)関節鏡視下手術
カメラ(内視鏡)を使って行う手術で、損傷した関節の半月板を除去したり、関節軟骨を削って整えたりなど、関節内の掃除をして、痛みを取り除く手術です。
膝蓋骨の周囲に数ヶ所の穴を開けるだけなので、患者さんへの負担が比較的少ない手術です。軽度や中等度の人が対象です。
ただし、すり減った軟骨は元には戻りませんから、痛みについては完全に取れるとは言い切れないようです。
通常入院はありません。
(2)高位脛骨(けいこつ)骨切り手術
多くの日本人の特徴として、変形性膝関節症の進行とともにO脚となってしまうことです。
O脚になるとひざの内側に大きな力がかかるため、ますます、内側の軟骨や骨が削れてしまう悪循環になっていきます。
高位脛骨骨切り術は、このO脚を矯正して内側の負担を減らす手術です。言い換えますと脛骨を切ってあえてX脚方向に傾きを変える手術です。
この手術は、ある程度の「関節軟骨」が残っている中程度の方に適応されます。術後は中・長期的に安定した効果が期待できます。
ただ骨を切る手術ですので、骨折をした場合と同じように骨がきちんと治癒するまで、やや長い入院と治療が必要になります。(個人差はありますが、矯正した骨の部分がくっつくまで2~3ヶ月を必要とされます)
下記の人工関節置換術に較べて、自分の骨を残すことができ、しかも十分な範囲で動かすことができます。
ただ、外側の負担が増えることになるので、外側の軟骨が十分に残っていることが必要です。
※脛骨(けいこつ):向こうずねの骨。
QOLの大きな低下と介護が必要となってきた…
(3)人工膝関節置換手術
重度の障害(変形)のおこった関節を金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工関節で入れ替える外科的手術を人工膝関節置換手術といいます。なんか怖いイメージがありますが、最近は国内で年間8万人以上の方がこの手術を受けているということです。
使用される人工膝関節の素材や使用感、耐久性も向上しており、いまでは20年以上は使用できるとされています。
当然激しい運動はできませんが、趣味程度のテニスやゴルフは問題ないとのこと。
既述したように、高齢化の進む現在、膝の痛みから歩くことができずに外出を控え、QOLが大きく低下していたり、介護が必要になっている場合などは、この手術を受けることで劇的に生活が変化するといっていいでしょう。
人工膝関節置換手術には膝関節の表面全てを置き換える人工膝関節全置換手術と、ダメージが軽度な場合に膝の関節面の一部(内側か外側か)を置き換える片側人工膝関節置換手術(単顆置換術:たんかちかんじゅつ)の2種類があります。
但し、膝や他の部位が化膿している方には人工関節手術ができません。
[手術と年齢]
人工関節の耐用年数は、今日では15から20年程度といわれています。
ここから、もし手術をするとすれば、60歳~65歳以上の患者さんが望ましいとされます。
これは、再手術を避ける意味で、平均寿命から考えられていることです。
とは言え、若い年齢であったとしても痛みが強く歩行が困難な場合は、人生の大切な年代にできるだけ豊かな生活を送れるようにすることが第一です。
片側人工膝関節置換手術(単顆置換術)について
<メリット>
・全置換手術と比べて骨の切除量が少なく、手術の傷あとも小さくてすみます。
・膝関節内の靭帯を温存することができる。
・身体への負担が少ない分、スムーズなリハビリが行えるので、早期の回復が見込めます。
※単顆(片側)置換術適応の方は、運動療法で良くなる場合も少なくない‥!?
・膝をしっかりと伸ばすことができる。
・膝の片側(内側または外側)のみが痛い。
・膝の靭帯(じんたい)には異常がない。
・O脚やX脚の進行の程度が軽い。
・関節リウマチではない。
・それほどの肥満ではない。
外科的な治療も今日、技術の進歩により、手術による傷口は小さくなり、太ももの筋肉も傷つけずに行うことができるようになってきているようです。
手術後はひざを深く曲げる正座などは控えなければいけませんが、術後早期から関節を動かすことができ、歩行も行えます。
「歩く力は生きる力」と言われます。
すべては、自分の足で歩き遊べる"健康寿命"を、"平均寿命"に近づけることにあると言えます。
変形性膝関節症は加齢によるところも大きいので、絶対予防できるかと言えば、現在のところそうは言い切れません。
普通の生活をしてると年齢とともに筋力が落ちるのは必然です。
しかし、健康寿命を少しでも永く維持することはできます。
変形性膝開節症は、膝への負担を減らす生活を心がけることで、かなり防ぐことができるのです。
それに効果的なのが、下肢(脚)の筋肉、特に膝の周りの筋肉を強化することです。
膝の痛みを感じた時には、我慢せずにすぐ整形外科で診察を受け、その程度に合わせた適切な治療を始めることが大切です。
決してあきらめることなく「80歳を過ぎても旅行ができるひざ」を目指しましょう。