イスに座った時に、座面に当たる左右のお尻の骨を坐骨といいますが、坐骨神経痛の症状はこの部位に限るわけではありません。
「坐骨神経」は体の後ろ(お尻)の深い層の筋肉の前方から、骨盤の中を通り抜け、太ももの裏を通り、膝の裏で枝分かれし、ふくらはぎの外側寄り、そして足の甲及び指の筋肉の感覚を支配している非常に長い神経です。
坐骨神経は太くて長いため、その途中で何かしらの神経への刺激が加わると、この神経に沿った領域に痛みやしびれの症状が出てきます。
多くの場合、腰痛から発症し、次にお尻や太ももの後ろ、すね、足先などに痛みやしびれがあらわれます。
時には、麻痺や痛みによる歩行障害を伴うこともあります。
発症の原因
坐骨神経痛の原因は様々ですが、若年者の場合は、腰椎椎間板ヘルニアが多く、中高年層だと、脊椎の変性や腰部脊柱管狭窄症(ヨウブセキチュウカンキョウサクショウ)を原因としての発症が多いとされます。(腫瘍による場合もある※)
背骨に癌が転移した場合や、背骨の中央を通っている脊髄の腫瘍により、坐骨神経痛を伴うことがあります。安静にしていても痛みが消えない、夜間も痛みが続くなど、今までに経験したことのない症状であれば、早めに病院へ行きましょう。
妊娠中はホルモン分泌の影響で靭帯が弛みやすくなるとともに、腰部・骨盤を支える筋肉の働きにも変化が見られる場合もあり、その結果、坐骨神経の通る範囲に痛みや痺れなどの症状が出ることがあります。気になる痛みがある場合は、主治医か整形外科で診察を受けるようにしましょう。
- 腰痛がある
- いつもお尻に痛みやしびれ感がある。
- お尻が痛くて座っていられない。
- お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、さらに足へかけての痛みやしびれがある。
- 前にかがもうとすると、脚に痛みやしびれがでる。
- 後ろへ体を反らすことができない。
- 足に力が入らなくなる(感覚が鈍くなっている)
- 足が痛んできて立っていられない。
- 痛みのため歩行が困難になる。
- 足の力の入り具合に左右差がある。
- 足だけではなく、腰にも痛みがある。
- 足の裏がジリジリする。
- 脚部に冷たさ、だるさ、感覚異常がある。
- イスに座わっているだけで、お尻や脚(あし)に痛みが出る。
- 腰(身体)を動かすと足の痛みが激しくなる。
- 安静にしていても、お尻や足が激しく痛んで眠れない。
坐骨神経痛かな?と思ったらまず整形外科を受信しましょう。
坐骨神経痛が疑われる場合、自己判断で様子を見るよりも、病院を受診して必要な検査と適切な治療を受けた方がより早い改善が期待できます。
もし坐骨神経痛と思われる症状が出た場合は、整形外科を受診しましょう。
受診前に、以下の項目についてメモを作って持参すると便利です。
- 症状の発生時期:腰痛や下肢の痛み、しびれなどの症状はいつから?
- 症状のある部位:痛み、しびれのある部位、あるいは悪化する動作や姿勢は?
- 症状の出具合:日や時間により症状の強さに変化はあるのか?
- 具体的な原因:症状が出たきっかけ(心当たり)は?
- 症状の履歴:過去に同じような症状の経験の有無?
- 過去の疾患や薬:治療済み、治療中の疾患の有無と服用中の薬(お薬手帳)について
坐骨神経痛の治療法
病院へ行く事の重要性の一つは病気(名)の診断にあると言えます。
病院ではまず、坐骨神経痛の原因が何かの検査が行われます。このとき有効なのが上記の受診前の項目の把握です。
問診、触診、レントゲンやCT・MRI検査などの結果を総合的にみて医師は、病気を判断します。
基本的には、生活に支障を及ぼすような症状、あるいは重大な疾患がない限り手術は行わず、保存療法(対症療法の中で、手術以外のものを指す)がメインとなります。
保存療法では、まず症状をやわらげることを目標にします。
<坐骨神経痛における保存療法>
薬物療法
医師の診断に基づく、痛み止め等のお薬の服用です。
安静にしていても中々痛みが引かない場合などには、鎮痛剤などを服用することで痛みを抑えることができます。
また、炎症により神経が圧迫されることで、坐骨神経痛の症状が出ている場合もありますので、抗炎症剤・消炎剤などが有効な場合もあります。
神経ブロック療法
局所麻酔薬により、痛みが神経を伝わるのをブロックする治療法で、鎮痛剤などを服用しても痛みが治まらない人などに有効とされています。
理学療法(リハビリテーション)
痛みが強いと、どうしても動きを抑えてしまいます。長期間身体を動かさないでいると、筋肉が痩せてきたり、関節が固くなったりすることがあります。
理学療法の目的は、痛みをとるだけではなく、運動やマッサージなどにより、代謝機能や身体機能などの改善を行います。
認知行動療法・リエゾン療法
認知行動療法とは、痛みについての誤った認識を修正する「認知療法」と、痛みと行動の関係を知り、日常生活でできることを増やしていく「行動療法」を組み合わせた治療法です。
認知療法~「痛みのせいで何もできない」という考え方を、「痛みがあってもやれることはたくさんある」という方向に変えていくこと。
行動療法~認識の変化とともに、具体的な活動量を増やしていきます。
リエゾン療法とは、整形外科や心療内科・精神科など、複数の医師が連携(リエゾン)して治療にあたり、心身の両面から治療を行う方法です。
脊髄(脳)刺激療法
脊髄の近くに電極を埋め込み、電気信号で脳を刺激して痛みを取り除く治療法です。
薬物療法で効果が見られない場合に行われる治療法で、主に、腰部脊柱管狭窄が原因の坐骨神経痛に用いられます。
治療には、対症療法と原因療法の2種類があります。
対症療法とは、病気によって起きている症状の緩和などを目的とした治療。
原因療法とは、病気の原因そのものを取り除くことを目的とした治療のこと。
(疾患の多くは直接の原因と複数の遠因が重なりあって起こるため、原因療法と対症療法の区別は相対的なものと考えるべきでしょう。)
現在、腰痛で悩んでいる方のほとんどは、投薬治療・牽引治療、手術といった対症療法によらず、生活習慣上の改善やトレーニングでよくすることが可能です。
それは、日常生活での悪い姿勢がもたらす身体の歪みが腰痛に発展することがほとんどだからです。つまり、その原因である日常生活の改善を行うことが腰痛改善の最短ルートになるということです。