急性腰痛の場合は、急激な痛みは伴いますが、安静にしていれば9割は自然に治るものです。
それでも、残りの1割は慢性腰痛に移行してしまいます。
ここでは、腰の痛み(違和感・不快感・鈍痛)がいつまでも続いて慢性化する主な原因を紹介します。
腰痛を慢性化させる要因
腰に負担をかける生活環境
日常的に腰への負担が重なることで、腰椎を構成する筋肉、骨、椎間板、関節、靭帯、神経などの組織が損傷して腰痛を発生させます。
大抵の場合は、腰痛が発生すれば「腰をいたわり安静に」していれば、早期に回復します。
しかし、様々な事情により適切な処置をとることができず、無理をして腰に負荷をかけ続けていれば、当然ながら腰の損傷は治らず痛み続けます。症状はより悪化していき、それゆえ治るのにも時間がかるようになります。
加齢
避けがたいことですが、私達の体の組織は歳をとるごとに老化していきます。
骨盤が前傾し、背骨がゆがみ、徐々に腰が曲がっていきます。
そうして腰にかかる負担が増えると同時に、腰の骨や椎間板なども老化によって変性が進んで腰を支える力が衰えて腰痛を発症しやすくなります。
たとえ手術によってヘルニアを取り除いたり、骨を矯正したとしても、再び老化による変性が起きるため、年齢を重ねるほどに再発もしやすくなります。
老化は自然現象ですので、高齢者ほど慢性的な腰痛になりやすいのは仕方がないことです
でも、適度な運動を行い、バランスの良い食生活をとるなど、規則正しい生活を送ることで老化を遅らせ、慢性腰痛を回避することは十分可能です。
精神的ストレス
実際の腰痛の事例において、原因がはっきりしていて「椎間板ヘルニア」などの病名で診断を下せるケースは、実は少ないといわれます。
痛みがあるのにレントゲンやMRI検査の画像を見ても、腰まわりの骨や椎間板などの組織に異常が見られず、明らかな原因を特定できないものが腰痛全体の8割以上を占めています。(非特異的腰痛)
「腰痛とは」の項で説明しました通り、病院の診断では腰痛症や坐骨神経痛という名称で呼ばれます。
詳しい原因がわからない事例がこれほど多いのは、腰痛の原因の多くにストレスが深く関係しているためです。
近年において病気と心の問題、関係性は切り離せないものとなっています。
心理的な原因によって特定の臓器や器官に身体的症状が現われる病気は「心身症」と呼ばれています。
「精神的なもので腰が痛むはずがない!」と思いたいところですが、心の不調が身体の不調として現れるのはよくあることです。
また、「病は気から」という言葉があるように、その人の気持ちの持ち方や、その時どきの心理状況によって、症状が出たり症状が良くなったり悪くなったりするのも決して珍しいことではありません。
ストレスが痛みの原因となっている場合、ストレスを取り除くことができなければ、当然腰痛も治らずに慢性化します。
過度の安静
普通の生活においても寝すぎて腰が痛いということがあります。
腰痛の場合、安静が大事ということは間違いなのですが、だからと言って腰を過保護にしてしまうことは、かえって回復を遅らせたり症状を悪化させることにつながることです。
特に高齢者の場合、このことが寝たきりにつながる恐れもあります。
ぎっくり腰の初期など、腰に激しい痛みがある場合は安静が第一ですが、ある程度痛みが和らいで動けるようになってきたら、無理 のない範囲で普段どおりに日常生活を過ごしたほうが、安静にするよりも治りが早いことが分かっています。
理由としては、
- 運動不足になり、筋肉や骨などの組織が衰え、関節の働きも悪くなり、腰を支える力が弱まる。
- 体を動かさないことで血行が悪くなり、筋肉が固くなって痛みを生じやすくなる。
- 活動しない(寝てばかりいる)ことで、気持ちがふさぎこみやすく、どうしても意識が痛みだけに向いてしまう。これがストレスとなって、ますます痛みが強くなっていくという悪循環にはまる。
といったことがあげられます。