足底腱膜炎(そくていきんまくえん)
足底腱膜炎の症状・特徴
朝、目覚めて起き上がって、一歩目を踏み出したときに痛みを強く感じることが特徴です。
ほとんどの場合、しばらく歩くと痛みが徐々に軽減しますが、長時間の立ち仕事や、夕方になって歩行量が増えると、再び痛みが強くなってきます。
また、階段を上るときや、つま先立ちするとさらに痛みが増します。
ランニングの場合、開始時は痛みを感じますが、同様に運動を続けるうちに徐々に軽減します。しかし、長時間になると再び痛みが強くなってきます。
特に、かかとの内側前方に痛みが出ます。
足底腱膜炎原因
加齢や肥満などが原因の1つ
一般的に、足底腱膜炎は40代から50代の女性に多いとされますが、加えてマラソン選手など、ロードを走るスポーツを行う人、長時間の立ち仕事に従事している人、あるいは体重の重い肥満の人などに多く見受けられます。
高齢者では10人に1人くらいが経験しているともいわれています。
ジョギングやマラソンブームにより、特にアスファルト舗装の硬い道路を走ることも拍車をかけているようです。
人の足は、効率よく歩くことができるように”アーチ構造”をしています。そのアーチに弓の弦のようにピンと張っているのが「足底腱膜」になります。
足指の付け根からかかとまで伸びていて、アキレス腱に繋がっています。
※外反母趾や扁平足、開帳足などの足の障害はすべてこのアーチ構造の破綻が原因と考えられています。
足底腱膜は、本来弾力性のあるゴムのような膜状の組織ですが、加齢とともに変性し、硬くなり、傷つきやすくなります。
特に、足底腱膜とかかとの骨が付着する部分には、歩く時の腱膜の牽引力(ひっぱる力)とともに、足が地面に着くときの荷重に衝撃(圧迫力)が加わり、過大な負荷が集中します。
長時間の立ち仕事や歩行、体重の増加、靴が合っていない、スポーツ(ランニングやジャンプ)による使いすぎ、すなわち、負荷の蓄積によって、足底腱膜とかかとの骨が付着する部分に小さな傷が生じてきて、その傷が慢性的な炎症を引き起こし、痛みとなって表れるのです。
さらには、かかとの下にある脂肪組織が繊維化(硬化)することも原因の1つとされています。
足底腱膜炎の診断
診断では、上記のような痛みの症状のほか、以下の症状が認められた場合、足底腱膜炎と診断されます。
足底腱膜とかかとの骨の付着部周囲に圧痛(押さえたときの痛み)がある
超音波(エコー)検査や磁気共鳴画像装置(MRI)検査などを行い、
・神経の圧迫や障害による「足根管症候群(ソッコンカンショウコウグン)」
・筋や腱の部分断裂による「後脛骨筋腱機能不全(コウケイコッキンケンキノウフゼン)」
・交感神経の異常興奮もとで、神経が萎縮し筋肉が拘縮する「反射性交感神経性萎縮症(RSD)」
・足底腱膜繊維腫症(足底筋膜の良性の増殖性腫)
などとの鑑別を行います。
※エックス線検査で、付着部に骨のトゲである骨棘(コッキョク)が見られることがありますが、診断の決め手とはなりません。
足底腱膜炎の治療
治療の基本は保存療法…ほとんどは痛みが軽減
理学療法
・ストレッチ…足の指から足首にかけて反らすようなストレッチを行います。
1セット(10秒間のストレッチ×10回)を、朝・昼・晩など1日
3セット以上を目安に行います。
※足底腱膜が硬くなっている朝の歩き始めが特に痛むので、起床したらまずは ストレッチをすることをおすすめします。
・足の形に合った靴を履きましょう。
かかとにかかる負担を和らげ、また足部アーチ保持する足底挿板(靴の中敷き)などの装具を使用するのも効果的です。
・肥満の人は、体重を減らす努力も必要でしょう。(この病気に限らずですが…)
薬物療法
炎症が強い場合…痛みを抑えるために非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDS)の外用剤(塗り薬)経口剤(飲み薬)を用います。
痛みが非常に強い時…ステロイド薬の局所注射が行われることがありますが、かかとの脂肪繊維の萎縮や腱膜の断裂に対する注意が必要です。
手術療法
保存療法ではなかなかという重症の場合は、手術療法をなることもあります。
手術では、痛んだ足底腱膜の付着部を切り離したり、かかとにできた骨棘を取り除いたりします。
※足底腱膜の一部を切り離しても、その後の歩行への影響は、ほとんどありません。
日頃からのストレッチで足底腱膜炎を予防
足を床や地面につくたび痛いのが続くと、どうしてもその痛みを回避するような動作を繰り返すようになります。
このことで、膝関節や股関節などにも負担をこけるようになり、膝等の痛みも併発しかねません。
気になる方は、日頃からのストレッチを心掛けるとともに、痛みが慢性化する前に、一度専門医に相談してみましょう。